島情報−92

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マチリ 

 
与那国島の奇祭、ムラマチリ(カンブナガ)は毎年、旧暦10月以降の庚申の日にクブラマチリを皮切りに25日間に渡って執り行われる。この期間を島ではカンヌティ(神の月)と呼んでいる。

  マチリは与那国島の存続と繁栄を祈願する大切な祭祀。

  クブラマチリ(久部良公民館主催)では庚申の日に異国人退散を、ウラマチリ(東公民館主催)では辛酉の日に牛馬繁殖を、ンディマチリ(比川公民館主催)では甲子の日に子孫繁栄を、ンマナガマチリ(島仲公民館主催)では壬午の日に五穀豊穣を、ンダンマチリ(西公民館主催)では葵未の日に航海安全を、5つのマチリでそれぞれ祈願するという一連の祭祀である。

  島の人々は昔からマチリの期間中、主宰者は旧暦の8月以降からマチリの終了までの期間、四足の動物(牛、馬、豚、山羊など)、特に牛の屠殺及び食肉を禁じている。理由については様々な説があるがその一つとして、昔から農耕や交通の助けとなり、人々の暮らしに欠かせなかった牛や動物達に感謝してマチリの期間中は屠殺しないというものがある。その他にも主宰者は火事見舞い、葬祭見舞い、出産見舞いなどをつとめて避ける。

  古くからの伝統行事に向かうとき、長い年月の間、絶やさず守り続けてきた島の人々の丁寧さや誠実さ、勤勉さを思う。行事の意味を考えたときこの島に根付く大きな力をそこに思う。マチリの終わりドゥンタ(巻踊)の輪に入って揺れる炎を眺めながら、初めてこの島が何を守ろうとしているのかを考えた。外からこの島に来た私にはあまりに知らないことが多すぎると感じる。

  ンダンマチリを終え、全てのマチリが終わるとアンタドゥミと呼ばれる儀式が行われ、司達は神衣を脱いで人間に戻り、島人は公民館役員が打ち鳴らすカニンやンヌンの音でカンブナガの終わりを知り、期間中の禁忌も全て解かれる。
                                   松尾 恵(2008.12.14